世にも大きな話
大きなヤマは大きな話
私が尊敬する山木氏がある事件に巻き込まれ、警視庁の取調べを受けた。山木氏が面倒を見て一人前にしてやった小林が起こした事件なのだが、自分が逃れるために山木氏を利用したのである。恩をあだで返すとは小林のような男を言うのであろう。たまたま山木氏と同姓の人物が介在していたため、山木氏が嫌疑を受ける羽目となったのであった。
意気込んでいた本庁の刑事は、任意出頭の参考人とは名ばかりで、全く犯人扱いであった。本庁の刑事の面目に掛けてとばかりテレビのドラマ以上の厳しい尋問を受けたのである。しかし調べが進むに連れて、山木氏の人柄と共に決定的なものが出て、小林の仕組んだものとわかり、事件は解決したのであった。
だが一応調書は整理しなければならない。若い刑事が調書を整理している間、年配の刑事が山木氏に言った。
「山木さんは各方面に顔が広いから、いろいろな話しを聞いているでしょう。何か大きな話など聞いておりませんか?」
この年配の刑事さんは全くの堅物で、この堅さが認められて本庁の刑事に抜擢された人である。酒は好きだが外では絶対飲まず、家での晩酌が唯一の楽しみだと言うほどの、堅い男である。そこで粋人である山木氏は
「大きい話ねえ……。そう言えば大きい話があるんですよ。その話と言うのは、ある所にドエライ大きいモノを持っている男がいました。」
「その男はどこにいるんです?そして何を持っているんですか?」
年配の刑事さんはひと膝乗り出してきた。
「まあ黙って聞きなさい。とにかく、大きいものだから誰のものともサイズが合わないのです」
「ほう、このヤマは相当大きなヤマなんですね」
全く真面目な話と思って聞いているのだ。さすがに若い刑事は話の内容を理解出来てクスクス笑っているのである。
「黙って聞かないと最後まで話しませんよ」
山木氏は再び念を押して話し始めたのである。
――この男は考えました。自分の先祖がよっぽど世の中に悪いことをしたのではないか?その報いが子孫の私に因果応報となって現れたのだろう。これは先祖の罪滅ぼしをしなければならないと思い立ち、諸国の神社仏閣を巡って歩いたのです。
ある秋のことでした。山の中で秋の釣瓶落としの日はとっぷりと暮れてしまいました。
「これは困った。今夜は野宿で一夜を明かさねばなるまいか?」
と覚悟を決めて歩いて行くと、幸い、こんな山奥にと思われる所に一軒の祠がありました。
「これは天の助けだ。今夜一夜の宿をお願いしよう」
彼は一心に祈祷を済ますと中に入ったのです。真っ暗な中にもだんだん目が慣れて来るとどうも様子がおかしい。確かに人の気配がする。しかもそれが女性の模様である。
しかしどうせ俺は世捨て人だ。神仏に仕える身として今更何の欲望もない。彼は奥の人に向かって声を掛けました。
「私は訳あって世を捨て、諸国の神社仏閣を巡って歩いている者です。袖触れ合うも他生の縁とか申します。今夜一夜を語り明かそうじゃありませんか?」
すると、奥の女性は安心したのか、そろそろと出て参りました。そしてお互いの身の上話を隠すことなく話し合ったのです。
ところがどうでしょう。お互いの身の上話をしていくうちに、どうもこの二人の境遇が全く似ているのです。二人は同時に考えました。
「ここで相通ずる者同士が巡り逢ったのは、神のお引き合わせ仏のご加護に違いない。では早速一戦に及ぼうではないか」
するとこの女性はニンマリと微笑むと女性のあるところから布団を出し枕を出した。男はこれを見てビックリ仰天。
「いくら自分のが大きいと言っても、とてもこの女性には敵わない。こんな女性にかかったら自分は取り殺されてしまう。命あってのもの種だ」
彼は命からがら、その場から逃げ出した。女はこのチャンスを逃したら一生、女の喜びを知らずに終わってしまうだろう。逃がしてたまるかと懸命に追いかけてくる。山を越え谷を下り、とうとう広野へ出てしまった。もう身を隠す場所がない。進退極まり、思い余った彼は自分の逸物をおったてて、その陰に隠れた。彼女は大木だと思って通り過ぎた……。
この話しを聞いて若い刑事は大笑いだ。あまり馬鹿笑いをすると、外に聞こえてまずいんだ、と言いながら涙を流して笑っている。
ところが年配の刑事さんは
「いくら何でもこんな話はあり得ないし、それにしても話がデカ過ぎる」
と怒っているのだ。どうもこの人は人の話しを「はなし」として聞くことが出来ぬ人らしい。
猥談は万国共通の文学
そこで山木氏はこのコンコチ刑事をカラカッテやろうと、もう一つ話しをサービスした。
「ある娘さんが指に腫れ物が出来ました」
と言いながら人差し指を出しました。
「うん、それはヒョウソウだろう。あれは痛いんだ」
「まあ黙って聞きなさい」
――痛くて痛くて仕様がありません。嘆いているところへ一人のお坊さんが通りかかりました。
「娘さんや、何をそんなに嘆いているんだい?」
「あ、お坊さん、指に腫れ物が出来て痛くて痛くて仕様がないんです」
「何、そんなことかい。それならその痛い指をあんたのアソコへ入れて一晩寝てごらん。すぐ治るから」
純情な娘さんはお坊さんに言われた通りをしてみました。するとどうでしょう。女性のアソコは適当な温度と、適当な湿り気と、その上適当な吸引力まであるそうです。そのため腫れ物がふやけてウミが取れ、痛みがすっかり消えてしまいました。
娘さんは喜びました。この気立ての良い娘さんは早速、お坊さんの所へお礼に行ったのです。お坊さんはニコニコ笑って
「おうそうかい。それは良かった。それは良かったね」
と自分のことのように喜んでくれたのです。
「ところで娘さん。私にも痛いものがあるのだが」
と言うと、偉いお坊さんは法衣をゴソゴソとたくし上げて何かを出しました。
それは赤黒く腫れ上がり、その上青筋などが立って、見たとこいかにも痛そうでした。気立ての優しい親切な娘さんは申しました。
「まあ、これはさぞ痛いでしょう。私ので良かったら、どうぞお使い下さい」
偉いお坊さんは、娘さんのどこかを借りると、充分にウミを出しました。純情な娘さんは小首を傾けながら
「私の指はウミが出るのに一晩も掛かったのに、お坊さんはたちまちのうちにウミが出て小さくしぼんでしまった。やっぱり偉いお坊さんの体は私達とは出来が違うのかしら?」
と思いました……。
さすがに、この話はコンコチ堅物の刑事さんも、理解出来てニヤニヤ笑っていた。そこで山木氏は
「世界に冠たる日本の警視庁の刑事は、これくらいの猥談を聞いたり話したりして理解できぬようでは、とても世界の仲間入りは出来ない。猥談は万国共通の文学と言われるけれど、一番大切なことは、話す人の人柄と態度によってヒワイに聞こえたり、またはユーモアとしての笑いの種ともなるものである。
この歳になれば、あんた達も経験しているだろうけど、同じ内容の猥談でもヒワイに下品に話す人と、サラリと回りの人を笑いの渦に引き込む人といるはずだ。君達もこれを機会にユーモアのある猥談を勉強しなさい」
といって帰ってきた。
警視庁の取調室で、猥談を堂々と講義してきた人は、恐らく山木氏くらいのものであろう。
この刑事さん達はその後、半年に一回くらい
「山木さん、また、大きな話しを勉強に参りました」
と訪ねて来るのである。
ショート ショート
雷様のお弁当
真夏の昼下がり、雷が大暴れして夕立が通り過ぎた。ある男がニジのかかった空を見上げながら歩いてくると、大きな木の下に何か包みが落ちている。拾ってみるとピンクの雷模様の小さな風呂敷に包まれた二重弁当であった。
「今、暴れまわった雷様が落としていったお弁当だな。こんな可愛いお弁当からすると、今の雷さんは若い女の雷さんか」
男は興味をそそられて、風呂敷をほどき、中を見る気になった。
「さすが雷さんのお弁当にはオヘソの佃煮が入っている。さて、この下は何だろう」
と、上の弁当を持ち上げようとすると、天から声が降ってきた。
「オヘソの下は見ちゃいやよ!」
喧嘩の仲直り
ある未亡人が友達に相談した。
「私も夫に死に別れて十年以上過ぎるし、だからもうあの人への義理も果たせたし、いい人がいたら色事抜きで、お話し相手と言う積りで再婚したいわ」
「あら、ちょうどいい方がいるわ。裕福だし、思いやりもある人だし、それに体は元気なんだけど、どういうわけだか、あの方は全然駄目だそうよ」
すると未亡人は、むっとした顔をして
「全然駄目?それじゃ夫婦喧嘩をしても仲直りが出来ないじゃないの」
針の穴
看護婦が七人ばかり集まってワイワイと話しをしていた。一人が
「外科のH先生ね、態度は悪いし、誰にでもすぐ手を出すし、先週の土曜日ね、H先生の机を覗いたらコンドームが入っていたので、口惜しいから針で全部穴を開けといたわ」
すると、話しを聞いていた中の三人の看護婦が
「ヒェー」
と奇声を発すると椅子から飛び上がった。
緊急避難
今日も酔っ払って診察を受けに来たテツに医者が言った。
「テツ、そんなに酒ばかり飲んでいると、体がおかしくなって半身不随になってしまうぞ」
するとテツは急に真顔になって
「それは大変だ。で先生、私の場合は右ですか?左ですか?」
医者は急に言われてどぎまぎしながら、それでも威厳を示して、出まかせに
「そうだなお前の場合は右だろう」
するとテツは
「おう、危ない、危ない」
と言いながら、ズボンの右にあった男の大切な一物を、慌てて左の方へ移した。


